194号「フェアトレードの紅茶」はウソ!?2 - FLJへの質問
2009年 10月1日発行
先週末、横浜のネパリバザーロでイベントがあったので行ってきました。新し く発売されたコーヒー「シリンゲ村物語」のコーヒー豆を作っている生産者を、 スタッフの人たちが訪問した様子のビデオを見せていただきました。
車が通れる道路から、約8時間も歩かなければ生産者の村にたどり着けないと いうことで、ものすごいところからコーヒーを運んでくるものだと思いました。
生産者の人たちは、その同じ山道を、30kg以上もあるようなコーヒーの袋 を担いで、歩いてバスの通る道までコーヒーを運ぶのだということ。自分が同 じことをしたら、間違いなく途中で遭難すると思いました。
奇跡のようなすごい!コーヒーだと思いました。
前回は、フェアトレードについて批判的なテレビ番組が最近放送されたため、 その内容と、その番組に対する反論として出された、フェアトレード・ラベ ル・ジャパンの見解について書きました。
番組では、フェアトレード・ラベルの付いた紅茶の生産者の人たちが、フェア トレードの名に値しないような労働条件で働かされている現実があることを伝 えていました。
これに対するフェアトレード・ラベル・ジャパンからの反論は、次のようなも のでした。
「(番組で紹介された茶園のように)フェアトレード条件での取引先・取引量 が少なければ、当然受け取るプレミアム金額は少額なため、目に見えるような 変化をもたらすことは困難です。番組で取り上げられた茶園はいずれもフェア トレード取引量の割合が極端に少なく、その割合は平均して8%弱です」。
読んでいない方は、前回のものをぜひお読みください。
このメールマガジンは、ネパリバザーロのスタッフの人たちにも読んでいただ いているということで、先日行ったときに何人かとお話したのですが、前回の 紅茶の記事について、皆さんかなり気にしていました。私のメールマガジンを 読んでいない人でも説明をすると、「おかしい」という感想をもらしていまし た。
私たちが「おかしい」と感じていたのは、番組で伝えられていた事実もさるこ とながら、フェアトレード・ラベル・ジャパン(以下FLJ)の見解で、「フェア トレードの取引量が8%弱」と言っていたことでした(下のサイト参照)。
FLJ見解:NHK BS 世界のドキュメンタリー番組「“苦い”紅茶」について
(リンク切れを防ぐため、ウェブ魚拓を使用)
しかし、何が「8%弱」なのか、いまひとつはっきりしなかったため、FLOに 問い合わせをしました。前回のメルマガで、FLJからお返事が来たら、紹介し ますと言ったのですが、来ましたので、ご紹介します。
FLJによると、「番組で取り上げられたフェアトレード認証茶園が生産し販売 する茶葉全体のうち、フェアトレード条件で買い取られていく(つまりフェア トレード価格+プレミアムが保証されフェアトレード製品として流通される) 茶葉は全体の8%弱、という意味です。」ということでした。
また、番組の内容自体は事実だということでした。ただ、見ていて私は気付か なかったのですが、番組ではフェアトレードの茶園と、一般の茶園の両方を紹 介していて、その区別がつきづらかったということです。
下のように、いただいたメールで言っていました。
番組では、フェアトレード茶園と普通の茶園(伝統的な茶園)の両方を取材し ています。流れている映像や紹介されている現状が、ときに、フェアトレード 茶園のことを言っているのか、普通の茶園のことを言っているのか、混乱する 場面が多々あります。斉木さんもメールマガジンで紹介されていらっしゃいま したが、畑でヒルや蚊や蛇にかまれたり、防護服なしに有害な農薬を撒いたり している様子などは、フェアトレード茶園ではなく、普通の茶園を取材してい る場面もありました。じっくりとメモを取りながら番組を見ていれば区別がで きるかもしれませんが、普通に流して番組を見た場合、全体的にすべてフェア トレード茶園のことを言っているような印象を受けます。
とはいえ、番組で紹介されていた内容は、事実だということは、認めていまし た。つまり、労働者を不適切に雇用している農園主から、その農園で採れたお 茶のうち、8%を、フェアトレードの価格(高い値段)で買い取り、プレミア ムと呼ばれる労働者たちの生活向上のために使うお金まで支払っていた。そし て、その紅茶にフェアトレード・ラベルを付けて「フェアトレードの紅茶」と して売っていたということです。
「なんでそれがフェアトレードになるの?」という疑問を、私もネパリバザー ロのスタッフも持っていました。私を含め全員、「そんな話は初めて聞いた」 と驚いていました。
「関係者が知らないのだから、消費者が知るわけない」とも。
それについて、FLOのこの番組への反論を述べたぺージの中で、「8%弱しか 番組で紹介された農園からはフェアトレードの条件で買っていないのだから、 フェアトレードの条件で労働者が雇われていなくても当然」みたいなことを言 っているように感じられたため、「それは反論になってない」と感じました。
しかし、FLJへ問い合わせたところ、そういうことは言っていないと言います。
私はこのようなメールマガジンを書いていますが、WFTO(旧IFAT)の方のフェ アトレード組織にいたことがあったので、そちらの方の状況は、ある程度わか りますが、フェアトレード・ラベルの方のフェアトレードについては、公表さ れている情報でしか判断ができません。一般の消費者と同じレベルの知識・判 断レベルと思われます。フェアトレード・ラベルを推進している人たちが、ど のような考え方で動いているのかも知りません。
関係者ではなく、一般市民の感覚で、私が送った質問へのFLOからの返事を読 むと、どうしても理解しづらいというか、「変じゃないか?」と私は思ってし まうのですが、他の見方はできないため、消費者目線で疑問に思ったこと、再 度FLJに確認したいと思ったことを今回は書きたいと思います。
「8%弱」について
「8%弱しか番組で紹介された農園からはフェアトレードの条件で買っていな いのだから、フェアトレードの条件で労働者が雇われていなくても当然」と私 は受け取りましたが、そうではないとFLOでは言っています。
その見解を、私のところに来たお返事のメールから、長くなるので要約して示 します。
世界中の茶園が、その生産茶葉100%すべてをフェアトレード条件で販売する ことができたらそんなに素晴らしいことはないが、残念ながら現実はそうでは ない。
1%でも5%からでもフェアトレードの取引を始めていくことで、より多くの茶 園がフェアトレードに参加でき、そこで働く労働者の生活が少しずつでも改善 できるよう努めていくことが大切だと私たちは考えている。
フェアトレードに参加するためには、全生産量をすべてフェアトレード条件で 販売しなければならないとなってしまうと、取引できるのは、世界のごくごく わずかな茶園に限られたものになってしまう。そうなると、劣悪な環境で働か されている圧倒的多数の世界の労働者の人たちの生活環境は、いつまでたって も改善されないことになってしまう。
フェアトレードの取引量割合を少しでも増やしていくために、FLOではマーケ ットを拡大していく努力を続けている。例えばほんの一部しかフェアトレード に取り組んでいない大手企業に対して、その割合を増やしていくような働きか けや、フェアトレードに対する長期的なコミットメントを引き出し約束させる ような働きかけも行っている。
大手企業に「明日からすべての商品をフェアトレードに切り替えるべきだ」と 期待するのは現実的に難しいこと。でも1%からでも始めるように働きかける ことはできる。そうすれば新たな生産者がフェアトレードに参加できることに なる。私たちFLOは、その1%を5%にでも10%にでも増やしていくよう働きか けていく責任を担っており、そのための働きを続けていかなければいけないと 思っている。
この部分はどうもわかりにくかったのですが、要は、とりあえずはフェアト レードに参加する茶園を増やそう。売り先も増やそう。そうすれば労働者の生 活も良くなっていくはずだと言っているのではないかと思います。
これに関して異論もあるかもしれませんが、今回は取り上げません。
ただ、私たちが「おかしい」と思ったのは、そういう取引量の少なさの問題で はありません。
労働者を適切な労働条件で雇用しようと考えていない農園主から、その農園の 販売量のうちの8%を、フェアトレードの価格で、プレミアムまで付けて、買 い取る必要がなぜ、あるのか?ということです。
なぜ、それがフェアトレードといえるのか?ということ。
そういう事実があるということについて、問題だと考えたのです。
なぜ、そんなことをするのか?とFLOに質問をしました。
そもそもどうやって、FLOでは農園と取引を始めるのか?とも。
まだお返事がないので、来たら、ここでまたご紹介したいと思います。
ただ、FLJは、次のようにも言っています。
フェアトレードの売上割合が全体の8%に過ぎないからといって、茶園全体の 労働者への保証や農薬使用や生産方法について、フェアトレード基準に定めら れた条件を守っていないとしたら、それは許されることではありませんので、 監査の際に指摘され、注意・警告が出されたり、認証の停止や取消につながっ たりします。
このほか、「基準が守られていない生産者組合・茶園の認証が一時停止された り、改善されない場合には認証取消されたりというケースがここ最近増えてき ます。」とも言っているので、問題のあった茶園は、番組以外にも複数存在し ていたということになります。
認証を取り消されるケースが増えているというのは、この番組への見解を公表 している「わかちあいプロジェクト」でも述べていました。
NHK BS「”苦い”紅茶」 のフェアトレード批判について(2009.9.3)
また、FLJではこうも言っています。
経営者も労働者も一人一人全員がフェアトレードについて正しい理解を持って いるかというと残念ながらそのような茶園ばかりではありません。まだまだ不 十分ではありますが、FLOのリエゾンオフィサーと呼ばれる各国・各地にベー スを置く現地スタッフが生産者へのワークショップなどを行い、フェアトレー ドとはどういう理念なのか、フェアトレード基準ではどういうことを守らなけ ればいけないのか、プレミアムはどのように運用されなければいけないのか、 といったことを地道に伝える努力を続けています。
これがフェアトレードの基準が守られない原因ではないかと私は思いました。
労働者は、確かにフェアトレードのことをあまり知らないかもしれない。番組 に出てきた人たちも、「聞いたことがない」みたいなことを言っていました。 しかし、経営者がフェアトレードのことを正しく理解していないというのはど ういうことなのか?
なぜ、そのような人の農園に、フェアトレードの認証を、そもそも与えるのか?
それについて、FLJに聞いているところなので、お返事が来たら、ご紹介します。
フェアトレードの国際基準に基づいて、生産者や業者の監査・認証を行う機関 に、“FLO-CERT”というものがあるそうです。これについて、同機関が、監査 の日時をあらかじめ農園側に伝えているという批判への答えも兼ねて、次のよ うにFLJで言っていました。
これは正直に認め、消費者のご理解を得なければいけないことですが、 FLO-CERTによる監査も、全労働者をインタビューしたり、隅々まで抜かりなく 監査したりすることは不可能です。これはどんな認証の監査でも同じことが言 えるとは思いますが、農園の隅々まですべて訪問したり、全資料をチェックし たり、ということは時間的、コスト的にも難しいため、どうしてもランダムに 抜き出して確認することになります。ですので、ときに基準の不遵守を見落と してしまうことも十分あり得ます。先方に事前通知してから監査に行くことも、 時に批判の対象となりますが、準備しておいてもらわなければいけない資料も たくさんありますし、なによりフェアトレードを進めていくにあたり、相互理 解や信頼の構築もとても大切な要素です。事前通知してからの監査が通常です が、例えば基準不遵守についての通報や苦情が寄せられた時には、必要に応じ て、FLO-CERTでは抜き打ちで現場監査に入り、調査を行うこともしています。
なるほど。完璧な監査を行うことは難しいというわけですね。
しかし、テレビ局の人たちには、それができていた。
できていたというか、「フェアトレードの基準が守られている」とは言えない ような働かせ方を労働者にさせているフェアトレードの農園があることを突き 止め、カメラに収め、労働者からの証言を取って、番組を作っていました。
素人であるテレビ局の人たちにできたことが、専門にそれを行うプロである
FLO-CERTになぜできないのか?
何を調査しているのか?
これもFLJに確認中なので、答えが来たら、お知らせします。
今回、確認中のことが多かったので、答えが来たら、発行しようと思いました が、ものすごく長いメルマガになりそうなので、先に私の方から聞いた疑問・ 質問だけで発行しました。
次は、答えだけをご紹介する記事にします。
【参考】
●○発行者について○● このメルマガの発行者、フェアトレード&エコロジーの店「ふぇあうぃん ず」は、フェアトレードで輸入された商品と、髪やお肌に優しいシャンプー、 水を汚さない洗剤などのエコロジー商品を扱う通販専門店です。 本当に良い商品、生産者にとっても、お客様にとっても幸せにつながる商品 を、厳選してご紹介しています。合わせて、貧困・環境問題などに関する情報 発信も積極的に行っています。 店主は元フェアトレード団体スタッフ。自身の経験も交えながらこのメルマガ を書いています。 ■フェアトレード&エコロジー商品専門店「ふぇあうぃんず」 http://fwinds.jp/ ■ブログ「エコロジーショップ経営日記」 http://www.jski.net/ecoshop-diary/ 発行:フェアトレード&エコロジーの店「ふぇあうぃんず」 静岡県浜松市中区下池川町23-5 Cozy Court205 http://mscience.jp/index2.htm Mail: info@mscience.jp メールマガジンのバックナンバー集⇒ http://fwinds.jp/mail-magazine/ 配信中止はこちら⇒ http://www.mag2.com/m/0000120655.htm ※本メールマガジンの著作権は、発行人にあります。無断転載、配布、 商用利用等を禁止します。
編集後記
FLJでは、番組について、番組への反論を書いたページで次のように言ってい ます。
「番組制作者に対しては、フェアトレード認証に関する詳細な情報と証拠が提 供されていたにも関わらず、フェアトレード・ラベル運動の仕組みがこれまで 成し遂げてきた、途上国の100万人近い小規模生産者や労働者への具体的な利 益に関する事実は作為的に無視されています。」
私のところに来た問い合わせへのお返事のメールでも、「今回の番組がフェア トレード認証制度のマイナス面だけを伝えた報道であったことはとても残念で、 そのことがラベルに限らずフェアトレード全体のイメージを損ない、結果、生 産者・労働者に被害が及ぶことを懸念しています。」と言っていました。
確かに、マイナス面ばかりでなく良い面もある、人びとの生活改善に役に立っ ているのは事実。だからそれも番組内で伝えるべきだったかもしれません。 でも、番組で伝えられたマイナス面の事実によって、消費者のフェアトレード へのイメージが崩れたのも事実といって良いでしょう。
また、番組はわかりにくいところがあって、字幕が完全でないところもありま した。英語の部分はともかく、労働者の話す言葉は字幕がないと全くわかりま せん。他に作りようはあったかもしれません。
でも、番組によって、関係者であっても今まで全く知らなかった事実を知るこ とができたのは。良かったと思います。
FLJでは、今回も番組を受け、情報公開やシステム面の体制を見直し、生産 者・労働者が不利益を被らないよう改善したいと言っています。
今後を期待したいと思います。
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写真は、「世界の工場」となっている現在の中国における生産現場の末端の労働者の悲惨な状況を告発した本、中国貧困絶望工場 「世界の工場」のカラクリ 。
隣国に暮らし、文化的にも経済的にも結び付きが強い日本人として、無視できな内容です。
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