196号 認証型フェアトレード その2
2009年 10月16日発行
前回、フェアトレードには2つの「型」と呼ばれるものがあること、それらは 「提携型」、「認証型」と呼ばれていること、両者の違いについてご説明しま した。
かなりマニアックな話題で、どのくらいの人が興味を持ってくれるか心配なと ころがありましたが、「勉強になりました」等の声をいただいたので、興味は 持っていただいているようで、安心しました。
前回述べたように、認証型のフェアトレード、つまりフェアトレード・ラベル を商品に付けて販売する形のフェアトレードは、ややこしくて理解が難しいと ころがあります。こんなメルマガをずっと書いている私自身も、フェアトレー ド・ラベル・ジャパンの方に詳しく教わるまで、正しく理解できていませんで した。
というか提携型とか認証型という言葉は好きでないし、生産者によっては両方 に出荷している例もあるということなので、明確に分けて考えられないところ もあるのですが、便宜的にここでは、「提携型」、「認証型」という言葉を使 って書きたいと思います。
日本では一般的な、よく「生産者の支援をしています」的な売り方をしている フェアトレード組織は、提携型と呼ばれるフェアトレードです。フェアトレー ド組織が生産者から製品を直接買い取り、輸入して、消費者に販売するという 形をとっています。シンプルなので、こちらは説明してもらえれば、すぐに納 得できます。
しかしラベルの方、認証型の方は、かなり違います。フェアトレードラベルの 認証をしている機関から生産者にお金は支払われておらず、逆に生産者から認 証料金を徴収します。では誰が生産者に経済的な支援を行っているかというと、 それは「バイヤー」と認証型フェアトレード関係者が呼んでいる業者が行って いるのです。
フェアトレード・ラベル・ジャパンのサイトにあった「認証・ライセンスの仕 組み」という図によると、そして、これまでこの団体の担当者からお聞きした 内容によると、バイヤーというのは、「輸入業者」にあたる業者のようです。 生産者にフェアトレード価格での商品の買い取りと、「プレミアム」と呼ばれ る労働者の生活向上のために使われるお金を支払うのは、認証型のフェアト レードでは、バイヤーの役割になります。
この図を見ると、かなり複雑な認証の過程を経て、消費者の元に商品が届くの がわかります。
FLO(Fair Trade Labelling Organization)というのは、『フェアトレー ドラベルの認証機関』と紹介されることが多いのですが、実は実際に認証を行 う「認証機関」はFLOーCERTであり、ここは同時にフェアトレードの基 準が守られているかどうかの監査を行う監査機関でもあることが、この図から わかります。
FLOは、「国際フェアトレード基準設定および生産者支援」を行うところで あると、図には書かれています。
ここまでのお金の流れをまとめると、下の図のようになります。
生産者 → FLO-CERT → FLO (認証料金の支払い) (上納金??) ↑ ↑ ↑ ↑認証料金の支払い ↑ ↑ 輸入業者--------- (生産者に代金とプレミアムの支払い)
「認証・ライセンスの仕組み」の表にあった説明によると、このほかに、消費 者の手に商品が渡るまでには、輸出業者、輸入業者、製造業者、卸業者に認証 が必要で、認証は、「消費者向け最終製品のブランドオーナーをライセンス対 象者とする」のだそうです。
このあたりのラベル商品の流通上の仕組みは、私にはいま一つ理解できていな いというか、説明を読んでもわからなかったのですが、「生産者の支援」とか 「貧困をなくす」と言われるフェアトレードの根幹部分は、認証型のフェアト レードでは、上の図のようになっています。
私も含め、先日訪問した横浜のネパリバザーロのスタッフの人たちのようなフ ェアトレードの関係者でさえ、このことを全く理解できていませんでした。 一体どれほどの消費者が、正しくフェアトレードラベルのことを理解できてい るのかと思います。ヨーロッパでは、日本よりもはるかにフェアトレードが盛 んなわけですが、こうした複雑な仕組みが、本当に消費者に理解されているの か?疑問なところがあります。
また、提携型のフェアトレードでよく言われる「生産者の支援」というのは、 こちらの場合、一体どの部分にあたる組織なり業者が行っているのか、良く分 かりません。一般的には、FLOがやっていると考えられていると思いますが、 FLOは生産者とは直接関わっていないし、お金の支払いはしません。
やはり支援的なことを行う役割を持っているのは、輸入業者ということになる のでしょうか?
提携型の方のフェアトレードではどこの組織も行っている商品開発は、一体ど この部分の組織が担っているのかも、よくわかりません。そういう発想自体が ないのかもしれませんが。
商品の品質には、一体どこが責任を持つのでしょうか?これも説明を読んでも 良くわからない。日本のPL法の考え方では、日本の輸入業者ということには なりますが、これは異物の混入とか、違法な農薬、添加物の使用といった健康 被害や事故につながる部分に関する責任です。「まずい」とか、不良品にあた るような商品に関しては、最終的にどこが責任を持っているのか?わからない です。
ラベル関係者は、消費者にわかる言葉で、もう少し丁寧に説明をする必要があ るように思います。
生産者に認証取得の働きかけはしない
提携型のフェアトレードの方では、たとえば収入源がなくて困っている農民た ちに働きかけて、日本の市場に合う品質のコーヒーなどを生産してもらい、 取引を開始することで、フェアトレードによる支援が始まるということが一般 的にあるわけですが、認証型のフェアトレードでは、それはないといいます。
前回まで取り上げていたNHKBSドキュメンタリー「“苦い”紅茶」という 番組で、フェアトレードの認証農園であるにも関わらず、労働者をフェアト レードとは言えないような不適切な条件で働かせている農園のことを、私は知 りました。そのことに疑問を持ち、フェアトレード・ラベル・ジャパンにいく つか質問をしたのですが、その質問の中の一つが、「フェアトレードラベル製 品の生産者(農園)との取引は、どうやって始まるのか?」というものでした。
これに対するフェアトレード・ラベル・ジャパンからの答えは、下のようなも のでした。
さまざまなケースがありますが、どんなケースでも一つ確実に言えることは、 監査・認証機関FLO-CERTは、フェアトレード認証を希望する生産者組合なり農 園なり、輸出入業者などの業者なりの主体者から「フェアトレードに参加した い」という一連の申請書類が提出されて初めて監査に行きます。 申請も出されていない(フェアトレード参加意思が示されていない)組織に FLO-CERTの方から出向いて行って、フェアトレード認証の監査を一方的に行っ て、「あなたの組織を認証します・しません」と審査しているわけではありま せん。
提携型のフェアトレードと同じように、認証型のフェアトレードでも、困って いる農民に働きかけて支援を申し出たり、既に存在している農家の組合や、フ ェアトレード的な条件で労働者を雇用している農園に、ラベルの取得を勧めた りしているのかと私は思っていたのですが、全く違いました。
当然、農園の方からラベル取得を申請することはあるとは思っていましたが、 申請がない限りは、自分たちの方から出向いていくことはないということです。
農園、その他から申請があると、FLO−CERTは監査計画を立てて、現場 を訪問し、認証を決定します。しかし、FLOもFLO−CERTも、フェア トレードの認証を行うだけで、商品の買い取りも、その保証もしません。
ではなぜ、農園ではフェアトレードの認証を取得しようとするのでしょうか? 以下のような、いろいろなケースがあるといいます。
- 商品の買い取りはバイヤーが行うため、これまで取引関係にあった海外のバイヤーがフェアトレードに取り組む方針を打ち出し、農園側にもフェアトレードの認証取得を求める、またはバイヤーからの資金や技術的な援助を行いながら一緒に認証取得に取り組むケース。
- 小規模生産者が自ら組合を結成し、または既存の組合が、認証取得を目指すケース。
- 農園主が、フェアトレードに取り組む意義を見出して、認証取得を目指すケース。
意義というのは、経営者としての責任という意味と、フェアトレードの盛んなヨーロッパとの取引につながること期待してという意味がある。
BSの番組で紹介された農園は、後者の方を農園主が期待していたのかも。
認証取り消しとフェアトレードからの離脱
これまで述べているように、フェアトレードの認証機関では、商品の買い取り は行いません。農園側は、認証を取ったからといって、必ずしもフェアトレー ドの条件で、つまり高い値段で買ってもらえるとは限らないのです。認証を取 得したバイヤーとの取引が始まらないと高い値段では買ってもらえないし、取 引が始まったとしても、BSの番組に出てきた農園のように、全出荷量の 8パーセント以下とか、ごく少量しか買ってもらえない場合もあります。
そうなると生産者(農園)としては、高い認証費用を払ったのに、それに見合 った金額では買い取ってもらえないことになります。しかし、だからといって、 フェアトレードの認証農園で、あの番組のように、労働者をその国の最低賃金 にも満たない賃金で働かせることは許されていません。そのような農園は、 FLO−CERTによる監査で改善を要求されることになります。
ただ、FLO−CERTによる監査は、フェアトレード価格での買い取りの少 ない農園だけに対して行われるわけではなく、すべての農園がその対象になり ます。
監査によって、違反が発見されたとしても、すぐにフェアトレード認証の取り 消しにはしません。農園主に改善を求める根拠がなくなるためです。認証機関 としては、認証を取得したりそれを維持したりすることを通じて、農園主に良 好な条件で労働者を雇用するようになることを望んでいます。
このFLO−CERTによる監査・認証は、「以前に増して厳しく実施するよ うになって」いる。「基準が守られていない生産者組合・茶園の認証が一時停 止されたり、改善されない場合には認証を取り消されたりというケースがここ 最近増えています」とフェアトレード・ラベル・ジャパンでは言っていました。
農園主としても、フェアトレードの認証を取得しても、そのメリットが感じら れない場合には、フェアトレードから離脱することもあります。
農園としても、フェアトレードの認証を取得するためには、監査に通る必要か ら、設備投資を先行して行わないといけません。それらを維持するコストもか かります。にもかかわらず、フェアトレードの取引量が元もと少なかったり、 年々少なくなっていったりすれば、フェアトレードへの参加を取りやめるとい うこともあるということです。
農園主の中には、フェアトレードの理念に共感したというよりも、「取引先の バイヤーから認証取得を求められたという消極的な理由でフェアトレードへの 参加を決めた人たちもいるかもしれない」とも言っていました。そういう理由 であっても、労働者の生活改善につながる可能性があるため、認証しないとい うことはないといいますが、経済的なメリットが感じられなければ、フェアト レードから離れてしまう可能性は大きいと思われます。
世界的には認証型こそが、フェアトレード
このところ数回にわたって、最近になって新しくわかった事実を基にして、 認証型のフェアトレードの仕組みについて、その問題点と思われる部分も含め てお伝えしてきました。フェアトレードを認証型と提携型に分けて考えること は、個人的には好きではないですが、同じ「フェアトレード」という名前を使 っていても、違いがかなり大きいことがわかります。
認証型は日本人にはいまひとつ理解しづらいですが、世界的にはこちらの方が 主流になっており、認証型こそが「フェアトレード」です。
日本のPeople Treeとかネパリバザーロが加盟する提携型のフェアトレードの 組織WFTO(World Fair Trade Organization)というものもありますが、 あちらと比べると弱小です。
WFTOもIFATだった頃とはそのマークが変わりました。FLOのフェア トレードラベルが世界的にはフェアトレードの標準になっているとことから、 WFTOのマークの色を、これまでの茶色系統の色から、フェアトレードラベ ルの色に合わせた青・緑系統の色に変えました。
参照:フェアトレードの認定ラベル/マークについて その3 WFTOについて
WFTOのマークは、商品に付けるものではないのですが、「プロダクトラベ ル」と呼ばれる商品に付けるラベルの新設も検討されているということです。 ラベルを商品に付けるということは、認証的なことも必要になると思われるの で、そうなると、両社の区別はあまりなくなってくる可能性があります。
WFTOに名称変更した経緯に問題があったとも言うし、これに加盟しないフ ェアトレードの組織も多い。日本のフェアトレード組織の中には、「フェアト レード」という名前を使いたくないと言っている代表の方もいるので、これか らどうなるのか、面白いと言えば面白い。でも、心配な気もします。
【関連情報】
●○発行者について○● このメルマガの発行者、フェアトレード&エコロジーの店「ふぇあうぃん ず」は、フェアトレードで輸入された商品と、髪やお肌に優しいシャンプー、 水を汚さない洗剤などのエコロジー商品を扱う通販専門店です。 本当に良い商品、生産者にとっても、お客様にとっても幸せにつながる商品 を、厳選してご紹介しています。合わせて、貧困・環境問題などに関する情報 発信も積極的に行っています。 店主は元フェアトレード団体スタッフ。自身の経験も交えながらこのメルマガ を書いています。 ■フェアトレード&エコロジー商品専門店「ふぇあうぃんず」 http://fwinds.jp/ ■ブログ「エコロジーショップ経営日記」 http://www.jski.net/ecoshop-diary/ 発行:フェアトレード&エコロジーの店「ふぇあうぃんず」 静岡県浜松市中区下池川町23-5 Cozy Court205 http://mscience.jp/index2.htm Mail: info@mscience.jp メールマガジンのバックナンバー集⇒ http://fwinds.jp/mail-magazine/ 配信中止はこちら⇒ http://www.mag2.com/m/0000120655.htm ※本メールマガジンの著作権は、発行人にあります。無断転載、配布、 商用利用等を禁止します。
編集後記
ここ何回かで認証型のフェアトレードの問題点的な内容の記事を書いています が、提携型のフェアトレードの方も問題がないわけではありません。
認証型の方は、第三者機関による認証というものがあるわけですが、提携型の 方はそういうものはなく、「勝手にフェアトレードを名乗っている」と言われ ても仕方のない部分があります。実際、法的な規制があるわけではないし、知 名度も低いため、どこかの途上国から製品を輸入しただけで、「フェアトレー ド○○」と商品名を付けて販売しても違法でも何でもないわけです。
ヨーロッパ並みにフェアトレードが普及してくれば、「優良誤認」つまり、実 際より良いものだと誤解される売り方をしているということで、現行法でも規 制ができるかもしれませんが、今のところは何でもありです。
といって、そういうことをしても儲からないと思うので、やる会社はほとんど ないと思いますが。
WFTOを例に出しましたが、加盟していないところが日本では多いし、 「提携型」といってもいろいろあります。
中にはファッションやデザインが、フェアトレードの商品を売るための手段で はなく、フェアトレードの方がファッションやデザインを売る手段になってし まっているのではないかと感じるような組織もあり、個人的には疑問です。
しかし、話を聞くと良く売れていると言うし、消費者が最終的には判断するこ となので、そういうやり方もありなのかもしれません。
フェアトレードラベルも、世界的には圧倒的に消費者の支持を受けているわけ なので、否定はしません。「わかりにくい」だの「おかしい」だのとこちらが 文句を言っても、自分たちのやり方こそが「フェアトレード」なのだと言われ たら、認めるしかない。納得できない場合は、「フェアトレードという言葉を 使わない」という選択をするしかないかもしれません。
このサイト内では、144号以降のメールマガジンのバックナンバーを掲載しています。
143号以前のバックナンバーは、フェアトレード情報室のサイトで読むことができます。
貧困問題の背景が学べる本
フェアトレードを主題にした本より、むしろ研究者やジャーナリストが中立的な立場で書いた本の方が、 フェアトレードが必要になる背景や貧困問題について学ぶのに役にたちます。
写真は、「世界の工場」となっている現在の中国における生産現場の末端の労働者の悲惨な状況を告発した本、中国貧困絶望工場 「世界の工場」のカラクリ 。
隣国に暮らし、文化的にも経済的にも結び付きが強い日本人として、無視できな内容です。
他にも世界の貧困の原因やそれを解決するための取組、 そしてフェアトレード・ラベルへの批判を書いている本もご紹介しています。
メールマガジン「貧困のない世界を作る!フェアトレードの話」について
当店で発行しているメールマガジン「貧困のない世界を作る!フェアトレードの話」は、
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そうした問題の解決のために行われるフェアトレードをはじめとする活動について、
毎回ご紹介したりしています。
時にはフェアトレードの業界のもつ問題点を指摘する記事を書くこともあります。
元フェアトレード団体スタッフの店主が、自身の経験などを交えながら、 フェアトレードやその背景について解説するメールマガジンです。
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